暮らしの中で見る方角を決める
最初の打合せで「商店街に住むのは本当は嫌なの」というクライアントの奥さんの一言がずっと設計をしている時の課題だった。
どうしたら安心してここで暮らせるか、おまけに面してる商店街の反対側は小学校の校舎の廊下であり、そのことも嫌な理由のようだ、プライバシーが侵されそうな気がするのだろう。
1,2階をテンナントに貸し出すので、住居は3階になる。その時点で商店街とは高さ方向にズレるし、小学校とも間に商店街をはさんでいるので距離がある、それは打合せでも説明したが、先の言葉である。今まで住んでいたところが住宅街の中だから、変わりように差があり過ぎるのかもしれない。
とはいえ、敷地を変更することはできないので、どうしたものかと思案して、商店街や小学校の側は方角としては南だから、明かり取りのためにも開口部は必要であるが、商店街や小学校の方角を見ること無しにほぼ暮らしが成り立てば、商店街や小学校を意識すること無しに暮らせるかもしれないと考えた。
そこで、屋上をつくり、住居がある3階とトップサイドライトを通して視覚的につなげ、そのトップサイドライトは明かり取りにもなり、お孫さんが遊びに来た時は屋上が庭がわり、そのトップサイドライトを通してお孫さんが見え、コミニケーションができるようにし、むしろ、商店街や小学校の方角とは反対にはなるが、室内空間からしてみれば、そちらの方角がメインのような扱いにし、全く商店街や小学校を意識すること無しに暮らせるようにした。
もちろん、クライアントの奥さんは毎日熟睡している。