外観の馴染む、突出するをミックスして
服も化粧も、自分が身につけるものや着飾るものは、自分と社会との関係性を表現したり、関係性を調整したりするものであり、TPOに合わせた服選びもその一種であり、それは建築でも同じであるという。
建築でいえば、棟飾りや玄関周りの装飾がそれに当たるかもしれない。今では見られなくなったが、その集落の長の家には特別な装飾が施されていた。
それをもっと発展させて考えると、建築の外観も社会との関係性を表現しているものといえるだろう。外観全体を考えると、その地域で突出したものというより、違和感なく馴染むものが求められ、地域によっては街づくりガイドラインなるものがあり、外観の仕様や色などが条例などで定められていて、それも主旨としては突出したものよりは馴染むものをつくらせるためにある。
例えば、昔からの宿場街のような古い街並みの意匠を守り、街並みの統一感を保とうとする場合は、馴染むものの方が良いだろうし、社会との関係性を表現する上でも、その地域においては古い街並みを維持することに社会的意義を見つけることができるだろうが、そのような場合では無い時、例えば、どこにでもある普通の住宅街ならば、馴染むだけが外観として、社会との関係性を表現することにはならず、反対に突出するという表現も社会との関係性を考えて許される表現であるはずであり、突出することにより、その建築を基点として、周辺環境に良い影響が沁み渡るような外観になったならば、それはそれで素晴らしいと考えている。
私の場合、大体、外観に関してはクライアントから要望を言われることがほとんど無く、逆に、私の方から提案して、それが採用される場合がほとんどである。
提案する際には、馴染むと突出するを使い分けて、地域での見え方、あと、クライアントの人柄とイメージが合うようなものや、馴染む場合でも、突出する場合でも、全体全部を馴染むか突出するかに振る訳ではなくて、割合として、馴染むを多めにするか、突出するを多めにするか、バランスを考えて、大体、どちらかが微妙な、ほんの僅かな差で多くなるようにミックスして外観のデザインを決めていく。