収納家具の軌跡が部屋になる
将来予測をして、なるべく不用な個室はつくりたくないと考え、そもそも広さに限界がある場合にはできるだけ細かく部屋を区切りたくはなく、大きく空間を使う方が広く感じる。
ただ、そうすると、どうしても部屋を分けたい時に困る。例えば、お子さんが男女の組合せの場合は、ある程度の年齢になったら部屋を分けたいが、小さな時は別々に部屋にこもられるのも親としては心配だから、一緒の部屋の方がよく、ところが大人になってもずっと家にいる訳ではないから、部屋を分けた後に大人になって家を出たら、残った部屋は物置きになるケースも考えられる。物置きならまだいいが、単に空き部屋になったら勿体ない。
それは2世帯住宅の2階でのこと、息子さんが将来結婚した時用の空間を用意することになった。
ただ、まだ予定がない、そこで、洗面所と便所を1つの箱状の空間に納め、それだけを固定にし、あとは移動できる同じく箱状の収納家具をいくつか用意した。
それ以外は小屋裏収納と壁一面の収納のみで何もない、間仕切り壁のない広い空間だけをつくり、移動できる箱状の収納家具を使って、部屋を2つに分けたり、その場合は想定して出入り口の扉を2つあらかじめつくったが、他にも、その移動できる箱状の収納家具の置く位置によっては、寝室コーナーなどのプライベートスペースをつくり、残りは団欒スペースにするなど、その時の必要に応じて、可変できる空間とした。
箱状の収納家具を置く位置もある程度何通りも想定して、それに合うように箱状の収納家具の大きさも決めていったが、今伺うと想定外のところに置かれていて、その意外性が面白くて、収納家具は中身を入れたまま移動できるので、模様替えも楽に楽しめるのだろう。