何もしない庭つき一戸建て
庭つき一戸建て、なんて言葉があるようには庭と家はセットだった、一昔前までは。今ではマンション暮らしの人も多いし、一戸建てを建てる人も庭などはじめからない場合も多い。マンションだから、敷地が狭いからと理由はあるだろうが、そもそも庭が必要ないのだろう。
前に建てた住宅は1階のリビングと同じ大きさの庭をつくった。その庭にはウッドデッキを全面に敷いて室内のリビングの床と同じ高さにした、リビングの延長として広く見せるためとリビングに光を取り入れるために。だから、はじめから庭に出ることは考えていなかった。それで十分で、それで豊かな生活になるだろうと思った。
その庭はリビングが十分に広くて日当たりが良ければなくてもよく、ただリビングとつながって見えるようにするためにウッドデッキを敷いた。そうしないとその空間が生きないから、生かすためにリビングの暮らしと関連づけて何もしない空間をつくった。
10年後その住宅に訪れるとウッドデッキは多少古びたが完成当時と変わらずに何もしない空間があった、まるでそこの空間だけ時間が止まっているように。きっとそう見えたのも何もしない空間だから、でもそれがよかったのである。何もしなくても庭はあった方が日々の生活が豊かになると、室内を見渡して、ご家族を見て思った。